| 愛しさも切なさも…
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| written by ふわふわ
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「ただいま・・・・。」
真澄は、久しぶりに早く仕事を切り上げ、マヤと同棲しているマンションへ帰宅 した。 ・・・2人は、まだ世間には秘密の関係であり、とりあえず真澄の所有している マンションでこっそりと暮らし始めていたのだ。 とはいえ、多忙な真澄は深夜の帰宅がほとんどであり 、今日のようにマヤの起きている時間に帰宅できたのは奇跡のような出来事なのだが・・・。 「あ・・・お、おかえりなさい・・・。」 「・・・・?」 たいてい、マヤが隠し事をしているときはこんな感じだ。 真澄はマヤをチラリ と見ると、 「・・・なんだ?何かあったのか?」 と問いかけてみた。 マヤは、後ろ手に隠していた封筒を差し出し、真澄に尋ねた。 「これ・・・速水さん宛てに届いていたの・・・私の知らない人みたい・・・・ 。」 マヤが差し出したのは、白い平凡な封筒のエアメール。差出人の部分は英語だが 、下のほうに小さく『杏子です!』 と書かれていた。 「杏子って・・・誰ですか?」 マヤがすねたように横を向いて真澄に問いかけた。 真澄は、フッと笑って封を切りながら答えた。 「ああ・・・昔、少しだけピアノを習っていたことがあるって言っただろう? その時お世話になっていた ピアノの先生の娘さんだよ。時々、チケットを送ってきてくれるんだ。」 真澄は封筒を開けると、中からペアのチケットを取り出した。 「ほら・・・やっぱりそうだ。」 ・・・チケットと一緒に、手紙が入っていたので、ガサガサと開ける真澄。 「読んでみるぞ・・・・『速水真澄様、お久しぶりです。今度また、日本で公演 することが決まりました。 お時間がありましたら、是非来てください。お待ちしています。 杏子より』だ ってさ。」 真澄は疑いの目をしているマヤに、手紙を渡した。 マヤは、ホッと安心した表情になったが、手紙に添えられた小さな写真入りのチ ラシを見て、少し怪訝な表情で真澄を見返した。 「この人が杏子さん? すごい綺麗な人・・・それに、速水さんよりもずいぶん 若そうな感じですね。・・・速水さんは 小さい頃にピアノ習っていただけなのに、どうしてそんなに親しいんですか?」 マヤが鋭いツッコミをしたので、真澄は少しドキリとしたが、冷静に答えた。 「ああ・・・確かに俺が習っていた頃は、彼女はまだ1〜2歳だったな。レッス ン中にチョコチョコと歩いて近づいてきて 可愛かったよ。・・・俺がピアノを辞めてからはずいぶん長いこと会ってなかっ たけど、彼女が高校生の頃だったか・・・ バッタリと会ったんだ・・・先生が俺を覚えていてくれてね、道で声をかけられ たんだよ。」 真澄は昔を懐かしむように語った。 そう、真澄は当時から大都芸能のことで頭 がいっぱいの生活であったが、ふいに恩師に 声をかけられ、娘である杏子を改めて紹介されたことがあったのだ。 「ふーん・・・・で、幼かった杏子ちゃんがずいぶん綺麗になっていて驚いちゃ ったりしたわけですね?」 マヤがふてくされてそう言うと、慌てて否定する真澄。 「おいおい・・・それはまあ、そうだけど・・・・俺はその頃から会社の事で忙 しかったし、彼女はピアノの才能が認められて ドイツに行ってしまったしな・・・。 こうやってたまにチケットは送ってきて くれたけど、忙しくてコンサートに顔を出したことはないよ。」 真澄はそう言ってマヤを後ろからギュッと抱きしめた。 マヤは、なんとなく疑ってしまった自分が恥ずかしく、素直になれない・・・。 「ふーん・・・そうなんだ。でも、もしかして杏子さんは速水さんに気があるの かもしれないですね。チケットもわざわざ送ってきて。」 「おいおい・・・・・・・。」 「もしかして、ドイツに行かなければ、2人は付き合っていたのかもしれないし !!」 「・・・・・。」 『ああ、バカな事言っちゃった・・・・。』 マヤはそう思いながら下を向いていると、泣きたくなってきた。 こんなくだらない事で真澄を疑って、わざと怒らせようとしている子供みたいな 自分・・・・。 最近、お互いに忙しくてほとんど会えない日々が続き、ずっと寂しかったのだ。 同棲とは名ばかりで、今日のように 起きている時間に会えたのも珍しいくらいだった。 『私が言いたいのはこんな事じゃない・・・。会った事もない杏子さんへの嫉妬 なんて・・・何言ってるんだろ、私のバカバカバカ! もう、速水さんに飽きられて嫌われちゃうかも・・・・。』 マヤが、やり場のない感情を押し込めようと必死で真澄の手をギュッと握り締め ると、真澄はますます強くマヤを抱きしめ、 クルリとマヤを自分の方に向かせると、あっという間に唇を奪った。 長い長い・・・気の遠くなるようなキス。途中でグラリと倒れそうになるマヤを 壁に押し付け、真澄は何度も角度を変え、 激しくてとろけるような口付けを繰り返した。 「・・・・んんっ」 マヤが息苦しくなって少し抵抗すると、真澄はやっと唇を離した。 そして、気が抜けて腰を落としそうになったマヤを慌てて抱き上げ、もう一度強 く自分に引き寄せて、言った。 「・・・君に・・・そんなに嫉妬してもらえるなんて、光栄だな。」 「やだ・・・嫉妬なんかじゃないもんっ!うぬぼれないでくださいっ・・・・・ 。」 「クックックッ・・・そうやってムキになるところがまた、可愛いんだよな。」 そう言いながら真澄はマヤの黒髪を手のひらですくい、ふっと真面目な表情で顔 を覗きこんだ。 「すまない・・・最近仕事が忙しかったからな、寂しい思いをさせていたんじゃ ないのか?」 「・・・・・・。」 黙り込んでしまったマヤを見ると、『やっぱりな』と思った真澄。 「君を感情的にさせるのは、いつも俺が原因だからな。」 「そ、そんなことないですっ!あたしだって・・・いろいろ忙しいし! 時間が あれば、浮気のひとつやふたつくらいっ・・・!!」 かなり無理をしてそんなことを言って意地を張るマヤがますます愛しくてたまら ない真澄。 「ああそうか・・・それは困るな。君に浮気なんてされたら、俺はもう仕事どこ ろじゃなくなるからな。 仕事虫もほどほどにして 君の相手をしないと大変なことになりそうだな。クックックッ・・・」 「もうっ!!ウソじゃないんだから!!本気なんですよ!!」 必死で口をパクパクさせながら大根役者ぶりを発揮するマヤ。 真澄はもう、そんなマヤを見ているだけで口元が緩んでしまうくらいに幸せを実 感していた。 ![]() 「・・・ねえ、速水さん・・・。 速水さんは、13歳からのあたしをずっと知 ってるけど、あたしは若い頃の速水さんを知らない・・・。 写真は見せてもらったことあるけど。」 マヤは、壁にもたれながら腰を下ろし、カーペットにぺったりと足を伸ばしなが ら座りこんでそう言った。 「なんだ、そんな事を気にしていたのか?・・・知りたいならいくらでも話すぞ 。」 真澄もマヤの隣に腰を下ろし、スーツの上着を脱いで近くの椅子に放り投げると 、ネクタイを緩めながらそう答えた。 「う・・・ん・・・そんな改まってっていうんじゃなくて・・・。なんとなくズ ルイって思っただけだから、やっぱりいいです・・・。」 真澄は、ふうっと溜息をつくと、マヤの頭をポンポンと軽く叩いた。 「マヤ、確かに俺は、君の過去はほとんどと言っていいほど知っているつもりだ 。 もちろん、君が高校時代に付き合っていた誰かさんと どこに行ったかも知っているぞ。 それは、大都芸能の社長という特権で耳に入 ることだから仕方がない。」 「えええ??やだやだ!そんな詳しいことまで!!!?信じらんない!!」 真っ赤な顔で怒るマヤ。 「まあ、そんなに怒るな・・・。今だから言えることだ。 でも、俺がどんな気 持ちでそういう報告を受けていたのか、 君は知らないだろう? 君には相当嫌われていたからな。」 「そっ・・・そんな事言うならあたしだって言わせてもらいたいです!速水さん こそいろいろあったじゃないですか!・・・あたしがどんな気持ちで・・・。」 マヤはそこまで言いかけると、真澄が余りに熱い視線で自分を見つめ返していた のに気付き、言葉を失ってしまった。 「そうだな・・・本当にお互い様だな。 ・・・つまり、俺が言いたいのはだな ・・・君にいろんな過去があったことも承知しているが、それをすべて ひっくるめて、君を愛しているということだ・・・。」 「・・・・へっ???」 「だ、だからだなあ・・・いろんな過去があった上での君が今ここにいるんだか ら、そのありのままの君が好きだということは、過去もすべて 愛しているということだ。分かるか?」 「あ・・・は、はい・・・。」 真澄は、自分でも照れくさい事を言ってしまったと気付き、コホンと咳払いをし て視線を外し、そっとマヤの肩を抱き、胸の中へ閉じ込めた。 「はあ・・・やっぱり速水さんは大人なのね・・・。あたしには、まだ難しいわ 。 ・・・だって、自信ないもん。 あたしの知らない頃の速水さんも 知りたいけど、知るのも怖い・・・。」 真澄の腕の中で、そんな弱々しい言葉をこぼしているマヤ。 なんともいじらしくてたまらなくなった真澄は、グイッとマヤの肩をつかみ、カ ーペットの上に押し倒した。 「わわわっ!!は、は・・・やみさんっ!」 マヤの抵抗をかわしながら、真澄の手はマヤのセーターの上を這い蹲り、情熱的 な唇で首筋をなぞり、そっと耳元で囁いた。 「そんなに俺が知りたければ、嫌というほど教えてやる・・・。」 「・・・・!!!」 『そ、そうじゃなくて、あたしが知りたいのは昔の速水さんで・・・・。』 マヤは、うまい具合に真澄のペースに乗せられたと気付き、文句を言おうと必死 だったが、あっという間に真澄の手によって体を熱くさせられ、 抵抗もできず、されるがままに真澄の愛撫に溺れていった・・・。 ![]() 翌日、大都芸能にて。 「ダメだ!!この企画は悪くはないが、俺のほうでもう一度配役を検討しておく !いいな!」 真澄の怒鳴り声が響き、企画部長らが一気に社長室を退散した。 真澄の手には、マヤが次回に主演する予定のドラマの企画書があった。 マヤの相手役には、『里美 茂』の名前・・・・。 あれから、里美はテレビ の出演ばかりに力を入れ、マヤは舞台専門だったため、2人が接触することは 一切ない状態であったが、マヤがドラマで活躍をするようになってから、里美と のニアミスも増えつつあったのだ。 その度に真澄は手を尽くし、マヤとの接点をないようにスケジュールを調整させ ていたのだが、今回は昔の2人の関係を逆手に取った宣伝企画であり、 真澄とマヤの関係を知らない企画部長は、得意気に企画を持ってきていたのであ った・・・・。 『君にいろんな過去があったことも承知しているが、それをすべてひっくるめて 、君を愛しているということだ・・・。』 ・・・真澄は、昨日マヤに口説いたセリフを思い出しながらタバコを取り出して 苦笑した。 『冗談じゃない・・・いくら月日が経ったからと言って、里美茂とマヤを再会さ せるなんてことは絶対に許さん! マヤは俺だけを見ていればいいんだ。』 大きくタバコの煙を吐き出すと、真澄は自分がいかにマヤを愛していて、その過 去にも嫉妬しているのかを思い知らされた。 マヤが、たまにでも里美のことを思い出しているのでは・・・などと考えただけ でも猛烈に腹が立ってくる。 できることなら、マヤの記憶から 桜小路やら里美茂に想いを寄せていたという記憶をすべて削除してしまいたい、 と思っているくらいなのだ。 「水城くん、コーヒーを頼むよ。」 「はい・・・かしこまりました。」 水城が席を外すと、真澄は気を取り直してスーツの内ポケットから昨日届いた杏 子からのチケットを取り出した。 『俺は・・・どうも昔から、何かに夢中になって輝いている人物に弱いらしいな ・・・。』 真澄は、夢に向かって走り出していた、あの時の杏子の瞳を思い出して苦笑した 。 マヤが疑いをかけてきたのは女の勘というヤツが働いていたのかもしれない。 ・・・少しだけ、彼女に惹かれる何かがあったんだよなあ・・・。 チケットの日付を確認すると、【2003/1/7 +ESCAPE+】 と書かれていた。 『公演のタイトルかな・・・エスケープ・・・か。マヤと2人で誰もいないとこ ろにエスケープしてみたいものだな。』 真澄は、フッと笑みを浮かべ、1月7日のスケジュールをこっそりと調整し、マ ヤと行こう・・・と決めると、少しだけイライラした気持ちが落ち着いてきた。 一方、水城は・・・怒鳴ったかと思えば急にニヤついたり苦笑したりする真澄を 影から怪しんで見ており、真澄が不在になると同時に、机の上で走り書きしてい たメモを チェックした。 「『1月7日、マヤとエスケープ・・・・???』 やだ、社長・・・新年早々 、夜逃げ・・・じゃないわよね・・・。」 水城の脳裏に「倒産」という文字が浮かんでおり、しばらくは彼女を悩ませる日 々が続いたという・・・。 1.11.2003 ![]() □ふわふわさんより□ 杏子さんがサイトをオープンすると知り、得意のお笑い話をプレゼントしようかと思いましたがあまりに素敵なサイトなので、真面目に取り組んでみました。 杏子さんから「笑いと甘甘とむふふ♪の混合作」というリクエストがあったので、ちょっとだけ意識しました(ほんまかいな) 文才がない上に、乏しい表現力の中途半端なお話で申し訳ありません・・・。杏子さんの素敵なお話を読みに来られたついでに、時間のある方だけお読み頂ければ幸いです。 杏子さん・・・素晴らしいサイトを立ち上げてくれてありがとう!これからも毎日来ます〜♪ ![]() □杏子より□ ガラスの楽園で仲良くして頂いていた、わたくしの笑いの師匠ふわふわさんから、サイトオープンお祝い頂きました〜♪ し、しかし、杏子、なんて、オイシイ役なのかしら!!全国1億2千万のマスラーに襲われそうだわっ!まじで防空頭巾に防弾チョッキにガスマスクで、 備えた方がよさげな気配…。こんなオイシイ事はきっともう一生ないでしょう…。 嗚呼!!束の間の幻影をありがとう!ふわふわさん!! しかし…、やはりそのオチがたまりませんね…。あっぱれ。。。 |
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